10年近く前の化学の授業。
「人類史上のもっとも偉大な発明が2つあるんだけど、何だと思う?」
突然、黒板にチョークで化学式を書きながら、化学の教授がこんなことを仰った。一つはおそらく、経済(通貨概念)だ。もう一つは宗教かなぁ、と世界の宗教の成り立ちを個人的に調べていた僕はそう思った。
そしたら。
「経済と、お酒なんだなぁ」
確かにお神酒の無い神様なんて居ない。それくらい人類の文化活動と密にかかわっているのがお酒だ。
それもそのはず、お酒ってのは基本的に大量の炭水化物を変換した結果だ。昔の農業技術だと作付面積あたりの収穫量なんて本当にタカが知れているので、1リットルぶんのお酒は家族数ヶ月ぶんの食料になり得るわけ。非常に貴重。だから神様にお酒を供えていた、というのは簡単に演繹で理解できる。
この先生は哲学的な人でもあり、山と酒をこよなく愛するはぐれケミストだと知ったのはもう暫く後のこと。
大学時代にぶどうを絞って自家製ワインを押し入れで醸造していたら、突然ビンが破裂して大変なことになった話や、「料理は化学」と授業の断言していた。
料理は化学、の凡例として膨らし粉を上げていた。
膨らし粉…ベーキングパウダーを使ってパンを作ると膨らむ。主成分が炭酸水素ナトリウムなわけだけど、加熱すると二酸化炭素と中性塩になる。
もちろんこれでもパンは膨らむけど、もっとクレバーなやり方は、イースト菌を使う。
菌が二酸化炭素をもりもり排出するからきっちり膨らむし、炭水化物を分解した排出物としてのアルコールが混ざるので風味がよろしい、と。
ほほー、たしかにそうだなぁと納得した覚えがある。化学のテストの成績は別にして、この言葉は僕の中でそれなりのウェイトを占めるようになり、頭で料理を作るようになったのはこの頃から。
調味料の「さしすせそ」も浸透圧の観点からの話だし、味噌汁を煮立たせてしまうと、いきなり不味くなるのは味噌の菌が完全に死滅してしまうからだ。なるほど、全て理に叶っている。
話はかわって。
もやしもん 1 (1)

もやしもん 1 (1)
コンビニで立ち読んでる時から気になってた一冊。今回めでたく単行本化。結論から言うと、メチャクチャ面白い。
世にも珍しい「醗酵」テーマにした漫画。ある意味SF。ピース電器のエピソードにあった「細菌を目視できる装置」に近い。ってかこれが源流なんだろうね。「様々な菌が目視できたら」というIFと畜産・農業の世界が非常にいい具合にシナジーを発揮してる感じ。
鈴木みその漫画に近いプレゼンテーション力が大変素晴らしい。
植村直己のエッセイや、口噛み酒といったマニアックなネタも出て来るので、作者の人
は本当はこれが本業だったんじゃねーのか?とまで穿ってしまう。それくらい濃い。これを書くのにすごい勉強してるんだろうなぁ。