R&D
研究室の電気を消し、施錠して階段を下りる。この時間にもなれば薄着だと少々肌寒い。
普段は暗闇に包まれる筈の階下へと続く螺旋階段が今夜は妙に明るい。ほんの少しだけ右側が欠けた「ほぼ満月」が南天の空高くに昇っている。
大きな爪痕を残した台風が去り雲ひとつない夜空。学校の隣にある化学工場の光と僅かな外灯、そして青い月明かり。
夜露が溶け込んで程よく冷えた外気を胸に吸い込みながら車に乗り込む。鞄を助手席にほうりなげ、煙草に火をつけながらエンジンをかける。
アクセルをゆっくり踏み込みながら、昼間、昔の研究担当だった先生とやりあったことの一部始終を思い出す。
○y一~~ <誰がそんなリリックでキモい長文読むのさ?
(|,へ
」 ○| ̄|_ <仰るとおりで…
(このテのAA、便利だなぁ…)
いやぁ久しぶりに真面目で気取った文章を書くとものすんげえ恥ずかしいですね。書いててお尻あたりがむづがゆくなるし。やっぱり生ぬるい文体のほうがしっぽりくるね。なんか漢字多くてダルいし。
で、話を戻すと、期末考査が(いろんな意味で)終わって一層ナーバスになってる僕のところへ前述の先生がやってきました。
あーそうそう、研究室の半分は5年生が来月にあるプログラミングコンテストとやらの作業場所になってるんですよ。なんかよくわからないメカがときたまウィーンと動いてます。で、それの様子を見に来てたみたい。
ところが5年生たちは昼飯調達にでも出かけてるのか不在。む、僕の方ににじりよってきましたよ?
「研究のほうは進んでいるかい? 担当の先生が心配してたよ?」
…あれぇ…研究担当の先生には、一応説明してたはずなんだけどなぁ…
(僕の研究担当の先生はひとことでいうと「刑事コロンボ」みたいな感じの人なので大体察してください。)
そこから僕の研究予定の内容について色々と。
僕があと1年半の在学期間で作ろうとしてるのは、ちょっとしたデバイスとそれの周辺ソフトウェアなんですが、思いついた日からかれこれ3年くらい経ってるけどまだ世に出てないハズ。仕組みは(設計してる限りは)ずいぶんシンプルだし、なんか普通に売れそう、そんなデバイス。ま、ずいぶんと大きく絵に描いた月餅ですが…
「そんなモノはねぇ、ちょっと知ってる人なら誰でもヒョイヒョイっと作れるんだよ。そんなのが研究と言えるのかい?」
いやそんなこと言われても、それが作りたくて入学してきたわけで。そもそも僕はハードウェアが専門外だから、シンプルで安価な回路にしておいて、それをソフトウェアでカバーできる設計を思いついたから作ろうとしてるんですが…
結局とりつくシマなし。「3週間で作れる」「誰が買うの」など、けちょんけちょんに言われました。
話を要約すると「研究と開発は違うんだからもっと学術的なモンをやれよ。実務経験もあるんだから何でも作れるだろ?」ということらしいです。
そのあとは研究、開発、発明それぞれの語句の定義について喧喧諤諤と。最終的には事務から先生の呼び出しというレフェリーストップで終了。
実際、今のところ有形物はおろか成果物を何一つ用意してない僕のTKO負けです。
ノートへの走り書きと、脳内の設計図だけではどうにもならないつーことですな。
しかし、実践的な(お金に直結する)フィールドが多いと思われる情報工学において、研究と開発って境界線がものすごーく曖昧だと思うんですよ。すくなくとも僕は。
どんなにすごい研究も大抵の場合ソフトウェアとかプログラムという「生産物」に到達するわけで、そのプロセスって「開発」と同義なんじゃないのかな、と。
誰も見たことのないもの、やってないものを作成 → 研究結果○ 開発結果○ 発明○
画期的な処理速度の向上など、既存のものを大幅に改良 → 研究結果○ 開発結果○ 発明×
秋葉原に売ってるモノで作れるけど、そういう製品はまだ無い → 研究結果× 開発結果○ 発明??
先生の意見をまとめるとこういうことらしいんですが、今ひとつ納得できないなぁ。
そして、こういう考えが頭から離れないあたり、僕は研究室じゃなくて、現場に生きるタイプの人間なんだなぁと再確認しました。





